塩見岳・北岳縦走2013/09/28

[南アルプス]                               →休日の山歩き top
塩見岳(3052m)・間ノ岳(3189m)・北岳(3193m)
2013年8月12日(月)~15日(木)

塩見岳 三伏峠小屋の水場付近から
                   三伏峠小屋の水場付近から望む塩見岳

夏休みの登山は、南アルプス・塩見岳から北岳へテント泊で縦走することとした。計画した行程は、次のとおり。
 1日目、長野県大鹿村の鳥倉登山口から出発し三伏峠小屋泊まり
 2日目、塩見岳に登頂し仙塩尾根を歩いて熊の平小屋泊まり
 3日目、間ノ岳・北岳に登頂し、早ければその日のうちに広河原に下山
 4日目、予備日

この行程の注意点は、2日目の三伏峠小屋から熊の平小屋までのコースタイムが10時間と長いので、朝早立ちすることだ。3日目は、広河原からの最終バスが16時なので、間に合わないときは北岳周辺でもう1泊することになる。
1日目のアプローチは、朝、東京を電車又は高速バスで出発し、長野県松川町にある、中央道・松川IC又はJR飯田線・伊那大島駅から、夏季だけ運行のバスで終点の鳥倉登山口へ行く。バスが登山口に着くのは午後2時で、三伏峠小屋までのコースタイムが3時間弱だから、ここも、山小屋到着が遅くならないよう注意が必要だ。
なお、三伏峠小屋より先の塩見小屋(テント場なし)に泊まれば、2日目の熊の平小屋までのコースタイムは短く楽になるが、その場合は東京を前夜に出発し、鳥倉登山口に朝8時半に着くバスを利用しなければならない。

結果は、3泊4日の期間中、晴天に恵まれ、雨は一度も降らなかった。2日目、三伏峠から熊の平までの行程は確かに長く、特に塩見岳から仙塩尾根を歩く後半は体力の限界に迫りヘトヘトになった。3日目は余裕で歩き北岳肩ノ小屋に泊まり、4日目に広河原に下山した。単独登山同士で道中を共にする人にも恵まれ、満足のテント泊縦走になった。
地図

【行程】
8月12日(月)
鳥倉登山口13:50→14:41豊口山コル→15:29水場→16:01塩川ルート合流点→16:31三伏峠小屋(テント泊)

8月13日(火)
三伏峠小屋5:05→5:17三伏山→6:17本谷山→8:17塩見小屋8:36→10:04塩見岳(西峰10:59→東峰)11:04→11:38蝙蝠岳分岐→12:00幕営禁止地→12:48北荒川岳キャンプ場跡→13:05北荒川岳13:30→15:00竜尾見晴→16:08安倍荒倉岳下→16:47熊の平小屋(テント泊)

8月14日(水)
熊の平小屋6:39→7:25農鳥岳水平道分岐→8:34三峰岳8:46→8:49仙丈ヶ岳分岐→9:59間ノ岳山頂10:22→11:29中白根11:51→12:16北岳山荘→12:48八本歯トラバース道分岐→13:26八本歯尾根道分岐13:40→14:08北岳山頂14:22→14:57肩ノ小屋(テント泊)

8月15日(木)
肩ノ小屋5:55→6:34北岳山頂6:52→7:14八本歯尾根道分岐→7:50八本歯のコル→9:49二俣10:01→大樺沢→10:29右岸へ→11:02左岸へ→11:24白根御池小屋分岐→11:43広河原山荘→11:50広河原

【交通機関】
8月12日(月)
JR中央線・立川7:21発(スーパーあずさ)⇒岡谷で乗換え9:45発⇒飯田線・伊那大島11:37着
伊那大島駅12:10発(バス)⇒13:36鳥倉登山口着

8月15日(木)
広河原11:55発(タクシー)⇒12:30芦安(温泉に入浴)13:50発(バス)⇒14:44甲府駅
JR中央線・甲府15:27発(かいじ)⇒立川16:38着

【JR中央線・飯田線で伊那大島駅へ】
JR中央線の特急スーパーあずさから、岡谷駅で飯田線の豊橋行き電車に乗り換える。登山のために伊那谷に入るのは初めてだ。乗客の中には登山客も少なからず混じっている。この電車で伊那大島駅に着き、すぐ登山口行きのバスに乗り換える予定だ。どこかで昼食の弁当を買っていかないと。そう思いつつも、岡谷駅のホームには売店もなかったし、また周りの登山客でビニール袋に弁当をぶら下げている人もいない。何とかなるさと思っていたら、周りの登山客はほとんど駒ヶ根駅で下車してしまった。
電車はカーブを繰り返した後、11時40分、伊那大島駅に着き、灼熱の日照りの中、他の5~6人の登山客と共に下車。
伊那大島駅

果たして駅前には、線路と並行に急斜面と道路が走り、バス停はあるもののコンビニも何もない。困った、弁当を食べないと山登りにならない。幸い、駅前にタクシーが客待ちしており、駅の反対側には町並みが見下ろせるから、バスの発車までの30分弱の間にタクシーで買い出しに行く覚悟で聞いてみると、歩いて2分の所にコンビニがあると教えてくれた。道路のカーブの先で見えなかったが、歩いてすぐの場所にコンビニはあり、弁当を買ってきて、バス時刻までの間に大急ぎで食べて、事なきを得た。

【バスで鳥倉登山口へ】
12時前に空のバスが来て、私を含め登山客ばかり数人が乗り込んだ。運賃は荷物代込みで2430円。やがてもう1台、松川インター発のバスがやってきて、登山客がこちらのバスに乗り移った。バスは1号車が終点まで直行し、2号車が各バス停に停まって行くのだとか。こうして19人乗りのバスに8人ほどの登山客が乗り、12時10分に発車した。
伊那大島駅前

バスは天竜川を渡り、支流の小渋川に沿って東に快走する。ダム湖のほとりを通り、南北にそびえる山地の間を抜ける。小渋川から離れ鳥倉林道に入ると、道が細く険しくなり、くねくねと曲がりながら高度を上げていく。やがて、マイカーが多数停まり、塩見岳への登山基地になっていると思われる場所へ来ると、運転士がゲートを開け、バスだけが入れる道をさらに2kmほど走り、鳥倉登山口に着いた。乗車時間1時間半弱、直行のおかげで定刻より20分ほど早い到着だ。暑さも麓ほどではない。

【鳥倉登山口から三伏峠を目指す】
「日本で最も高い峠 三伏峠 まで4km3時間」と案内表示がある。10人ほどの登山者が身支度をしている。
鳥倉登山口

登山届を書き、午後1時50分、登山開始。樹林帯は感じが明るく下草も豊富で、明瞭な道をひたすら登る。鳥倉登山口から三伏峠小屋までの間を10等分した標識が出てきて、10分の1の区間に15分位かかる見当だ。
鳥倉登山口から三伏峠小屋へ

しばらく尾根の右側をトラバースし、尾根上の鞍部(豊口山コル)で「三伏峠まで2km2時間」とあり、一休み。尾根の左側を巻くようになり、険しい所には桟橋が多く架けられている。「三伏峠まで1km1時間」の地点は、休まず通過。水場では、右手の斜面から細い水の流れがあり、のどを潤した。塩川小屋からの道が左手から合流する地点で一休みするが、こちらからのルートは小屋下の道路崩壊のため全面通行止めだ。
左側に展望が開け、明日のルート上の本谷山だろうか、その稜線の奥に初めて塩見岳が見えた。
本谷山(左)と塩見岳

【三伏峠小屋】
道が平坦になり、ついに三伏峠小屋に到着。4時半に着けたから、初日の歩きはほぼ順調だ。(以下2枚の写真は翌朝のもの)
三伏峠小屋(2日目朝)

日本一高いという三伏峠の標高だが、現地の南アルプス国立公園の看板などには「2615m」が示されている。これは三伏山の標高と同じであり、地図などから、三伏峠小屋の標高は2560m~2580mと思われる。
南アルプス国立公園の看板(2日目朝)

小屋の別棟の先にテント場があり、緩い斜面に5段ほどの段差が付けられているが、上の段からほぼ満杯で、下の方の一隅にテントを張った。
早速、水を汲みに行く。テント場の先を下ると、すぐ荒川岳・塩見岳の分岐があり、右の荒川岳方向に進みお花畑で左に分かれると、タンクに水が貯められ、豊富に流れている。先客が2人ほど、体を洗ったりしている。この水場まで小屋から片道10分余で、途中で塩見岳が見え(冒頭の写真)、道端にマツムシソウが咲いていた。翌朝早立ちできるように、必要な水はこの1回で確保することとし、今回は折り畳み式の水タンクも使用した。
三伏峠小屋のテント場

テント場で周りの登山者と話をすると、仙丈ヶ岳の下の水場(両俣小屋?)から走って来た男性や、私と逆コースで熊の平小屋から来た男性2人組などだった。賑やかな韓国人男性4人組もいた。
夕食は早茹でパスタなどを食べた。夜は寒く、体を縮めて過ごした。(この夜も流れ星が多く見られたと、後で聞いた。)

【三伏峠から塩見岳へ】
2日目の三伏峠での朝、長い1日の始まりだ。朝食は火を使わず、アルファ米を水で1時間で作るなどし、明るくなり出した5時5分にテント場を出発。すぐの分岐を塩見岳方向の左に取り、樹林帯を歩くと程なく緩やかなピークの三伏山(2615m)だ。辺りはハイマツ帯で、360度の展望が開ける。ちょうど塩見岳から現れたご来光を仰ぐ。この山頂には、この辺りの森林が特殊東海製紙の社有林であることを示す四角柱の立派な標識が立っている。
三伏山と塩見岳

次の本谷山までは、緩やかな傾斜の尾根筋を下って登る。尾根の右側は静岡県で大井川の源流域、左側は長野県で天竜川へと注ぐ支流の流域だ。お花畑にコバイケイソウやマルバダケブキが咲き乱れる。振り返ると、三伏山に連なる尾根の中腹に三伏峠小屋が見える。
本谷山(2658m)山頂は木立に囲まれ展望は良くない。広い尾根筋の樹林帯を歩き、やがて尾根の右側のガレ場歩きになり、権右衛門山の右を巻く辺りは水平の道だが、やがて登りになり、左から塩見新道を合わせるところで一休み。その先で尾根筋に出て一気に展望が広がる。西は権右衛門山の背後に中央アルプスの山並みまで見通しがあり、北には農鳥岳、間ノ岳から仙丈ヶ岳まで北部の山が一望だ。
南アルプス北部の山々 塩見小屋手前から

ハイマツの間を進むと塩見小屋だ。小屋は尾根の左に少し下がって建ち、背景に天狗岩、そして塩見岳を控える。小屋の前で一休み。
塩見小屋と塩見岳

小屋から右手の尾根に上がり、ハイマツの尾根筋を天狗岩に向けて一旦下り、尾根の右を巻きながら岩くずの多い道を登る。天狗岩のピークは右を巻き、コルに少し下って、ついに塩見岳本体の急な登りに取りかかる。尾根筋の右を巻くザレた道だ。
塩見岳への登り

急坂で、やけに浮き石が多いな、そしてヨツバシオガマが踏まれそうな場所に咲いているなと思ったら、道から外れて登っているのだった。天狗岩を見下ろすようになり、ようやく午前10時、塩見岳西峰(3047m)に到着。

【塩見岳山頂】
大小の岩でゴツゴツした山頂には、三角点と丸太の標柱だけがあり、あまり広くなく、360度の大展望だ。すぐ隣に東峰(3052m)があり、その左に富士山の山頂部だけが雲の上に飛び出している。
塩見岳西峰

先ほどから見えている農鳥岳・間ノ岳・北岳など北部の山並みのうちでは、甲斐駒ヶ岳に雲がかかりだした。そしてこれらの手前には、これから歩く荒々しい稜線のルートが丸見えになっており、塩見岳からやせ尾根を下ると、まず右に北俣岳・蝙蝠岳への尾根を分け、急に下った後、小さな昇降を繰り返して北荒川岳に至る。北荒川岳の周辺では稜線の左側が大きく崩壊し地肌が露わになっている。
塩見岳山頂から北を望む

また南部は、私にとって未知の山域だが、三伏山の左に烏帽子岳、小河内岳とたどり、荒川岳までが間近だ。
南アルプス南部の山 塩見岳山頂から

さて、塩見岳山頂は休憩も程々にして先を急ぐつもりだったが、実際には、山頂に着いてしばらくは荒い息を整えるだけで何もできなかったこともあり、パンなどの行動食で腹ごしらえして、東峰を通過する時には午前11時になっており、ちょうど山頂で1時間過ごしていた。

【仙塩尾根へ】
ここから、登山者の少ない山域に入る。とは言え、ちょうど良い時間帯で、塩見岳を目指して対向してくる登山者は結構多い。また前方に2分ぐらい先行して歩く男性がいる。蝙蝠岳への分岐を過ぎると急な下りで、ザレて滑り易い。ここは、三伏峠で話をした人たちが異口同音に要注意の急坂だと言っていた所だ。落石を起こさないよう注意してやり過ごすと砂地の広場で、幕営禁止の立派な四角柱が立つ。
幕営禁止地

その先は緩い昇降を繰り返し、ハイマツもまばらなザレ地が続く。前方に間ノ岳、右に農鳥岳を望みながら歩く。先行する男性との間隔が5分ぐらいにが広がったが、まだ見え隠れしている。やがて稜線の右側に木立やお花畑が現れる。
樹林帯、お花畑

木立の間から、前方稜線の左側が崩壊しているのが見える。
前方左に崩壊地

木の幹に、黄色の板に赤の両方向矢印が描かれた小さな標識があるのに気付いた。ちょうど、道は右方向に樹林帯を下るほか、左に分岐する細道がある。この標識はどちらを歩いても良いという意味だろうと考え、左の道を取った。右の道だと下った先でまた登りになるのを嫌ったためだ。すぐ稜線の左側に出て、崩壊地の上端を植生にすがるように歩く、危なげな道になったが、ともかく通過し、広いザレ地に出た。
崩壊地の上端を歩く

右下から樹林帯の道が合流してきた。ここは北荒川岳キャンプ場跡らしい。
北荒川岳キャンプ場跡

ザレ地にわずかに生えた草地で、急に重い疲労感を感じ、思わずザックを下ろし横になって天を仰いだ。
何分経ったろう、意識が戻り上体を起こすと見慣れぬ光景があった。それは大きな崩壊地が口を開け、その奥に塩見岳が控える光景だった。崩壊地の全部ではないが最後の部分で危ない縁を歩いてきたのだった。
口を開ける崩壊地と塩見岳

進行方向を振り返ると、先ほどの先行者も数分先に見えるので、気を取り直してザックを担ぎ歩きを再開した。

【北荒川岳から】
北荒川岳(2697m)は、広いザレ地の緩やかなピークで、申し訳程度の板の標識があってそれと分かるだけだ。
北荒川岳の山頂標識

ここで、先ほどから先行していた男性に追い付いた。名古屋の方から来た方で、昨日のバスにも一緒に乗っていた。トレールランの経験が長く、現在は、下りは速いが登りが苦手とか。互いに名前を名乗り、以後前後して歩くことになった。この方をhiiさんと呼ぶことにする。
さて北荒川岳を出発すると樹林帯になり、一時、稜線の左側をトラバースした。稜線上の針葉樹の深い森が、奥多摩や奥秩父の原生林と大して違わないとも思われたが、ここはれっきとした南アルプスの主稜線だ。標高2500m程度で、森林と森林限界が同居する山域なのだろうか。
稜線上の針葉樹林

緩やかだが昇降が続き、疲労も大きく、体力の限界に迫る歩きだったが、hiiさんのユーモアにも助けられ、疲労を楽しみながら歩いた。この間、すれ違う人は少なく、10人いるかどうかだった。遅くなり塩見小屋まで行けそうにない時間にすれ違った男性は、幕営禁止地にテントを張ると言った。
新蛇抜山(2667m)はそれと気付かぬうちに右側の樹林帯を巻いて過ぎ、次の竜尾見晴は樹林帯の上に鋭い岩峰が2度にわたり飛び出した場所で、展望があり、特に右手に農鳥岳が大きい。
竜尾見晴

安倍荒倉岳(2692m)は、稜線のすぐ下を通り、左に1分で山頂があることを示す小さな案内が木の幹に付けられていたが、立ち寄る気力もなく通過した。

【熊の平小屋】
稜線右の樹林帯から稜線上のハイマツ帯に跳び出した後、尾根の右に深くトラバースし、ついに熊の平小屋に到着。(写真は翌朝のもの)
熊の平小屋(3日目朝)

受付で、東海フォレストが管理する最北の小屋とのことで、hiiさんが送迎バスの説明を聞く間も、私は座って荒い息を整えた。テント場は小屋から1段下がって横に3カ所ほど並んでおり、そのうち真ん中の湧き水のある所に入る。高校生風の3人組と単独男性がいる。私はなかなか荒い息が収まらず、作業もゆっくりになった。単独男性は大阪の人で、やはりトレールランナーで、hiiさんと話が弾んだ。熊の平小屋の水場は豊富な水が流れており、テント場の水も飲めるようだ。ラーメンなどを作って食べた。
テント場は傾斜があったが、頭を上に足を下にするように張ったので、快眠できた。夜半の1時半頃、3人で流れ星を見た。銘々で空の別の方向を見ているので、1つの流れ星が人によって見えたり見えなかったりする。

【熊の平から間ノ岳へ】
3日目、熊の平で迎えた朝は、ゆったりとした出発になった。既に、今日中に広河原に下山するのは止め、北岳登頂の後は白根御池小屋泊まりを目指すことにした。hiiさんは肩ノ小屋泊まりということで、私が先行して、6時半過ぎに、朝日を浴びて光る熊の平小屋を出発。(上の写真)
コバイケイソウが茂る斜面を登ると、熊の平との間に谷を挟んで対岸を登るようになり、熊の平小屋が見えるほか、昨日歩いた仙塩尾根の稜線や、さらに塩見岳が見渡せるようになってきた。
熊の平小屋と仙塩尾根の稜線、塩見岳

次に台地状の三国平の上に至り、農鳥岳への水平道の分岐だ。登山者の非常に少ないこの区間だが、ここで、大きなザックを背負った男性が追い付いてきて、奈良田・黒河内岳間に新しくできた道を利用して大井川源流域を5泊で巡る途中だと言って、農鳥岳の方に歩いて行った。
三国平は見通しが良く、10分ほど後ろを歩くhiiさんが見え隠れする。
三国平

幅広い三国平がやがて一本の岩稜に狭まり、三峰岳への急な登りになる。
三国平から三峰岳、間ノ岳を望む

三峰岳(2999m)のピークには四角柱の標識とケルンが立ち、一方に間ノ岳がそびえるほか、三方の展望は抜群だ。
三峰岳

三峰岳 仙塩尾根と塩見岳を望む

このピークを下りると左に仙丈ヶ岳への分岐があり、ここで仙塩尾根とも別れる。さらにコルへ下った後、間ノ岳へのやせ尾根の登りにさしかかる。ここで出合った男性は、熊の平の先の安倍荒倉岳・新蛇抜山などのピークをピストンするのが目的と言うので、昨日歩いた各ピーク付近の様子を伝えた。この区間で出会った人は非常に少なかったが、多彩な歩き方をする人が多いようだ。

【間ノ岳】
ザレた尾根を登り、午前10時、間ノ岳(3189m)に到着。
間ノ岳山頂 ガスが出た

ようやく、登山者の多い賑やかな区間に入り、緊張感がほぐれた。10分後にhiiさんも到着した。ちょうど、北岳山荘で診療所を開いている昭和大学の人達も登ってきた。間ノ岳の山頂は岩とザレ地で広々としており、特殊東海製紙の四角柱の標識や、2007年に改修された真新しい「相ノ岳」の三角点がある。山頂にガスが漂い始め、時折真っ白で周囲が見えなくなる。

【中白根】
間ノ岳から北岳を目指して歩く。我が国第4の高峰から第2の高峰へ、まさに日本一の縦走ルートだ。まずは大きく下った後、標高3000mを下らない高さを保ちながら、ザレた道が続く。小さなピークは主に左を巻き、昇降は緩やかだが、重い荷を背負った歩きでは結構つらい。
間ノ岳から中白根への稜線

途中、北岳のピラミダルな姿を望む。山頂から八本歯のコルまでの稜線が急だ。
北岳 中白根手前から

そしてついに、午前11時半、緩やかなピークの中白根(3055m)に着いた。
中白根から間ノ岳への稜線

中白根は、4年前、初めて北岳に登った時に、ここまで足を伸ばしてピストンした思い出の地であり、これで線が繋がった。また、その時、ここで単独男性に会い、ここから北岳を経て肩ノ小屋まで相前後して歩いたが、その人は、三伏峠、塩見岳から縦走し、熊の平小屋では悪天候で2泊したとのことで、最終日となったその日に熊の平から広河原まで歩き抜けたのだった。その人の歩いたコースを自分も辿ってみたいというのが、今回の山行の原点だった。やがてhiiさんも到着した。
前回は中白根と北岳山荘の間で雷鳥の親子を見たので、昭和大学の人に雷鳥を見かけるか聞いてみると、雨の日の翌日などは出てくるが今日のように晴れの日が続くと出てこないそうだ。

【北岳】
中白根から北岳に向け歩き出す。緩やかに下り、北岳山荘の辺りを水平に歩いた後、北岳への急な登りにさしかかる。北岳は中腹から山頂にかけてガスが出始めた。
北岳山荘へ 北岳にガスがかかる

八本歯のコルへのトラバース道の分岐では、「北岳山頂へ40分」の標示。ここを過ぎると登りがさらにきつくなる。八本歯のコルへの尾根道の分岐(吊尾根分岐)では、「北岳山頂へ20分」だが、どうもこの間20分では済まず、30分以上かかっている。日本第2の高峰はそう簡単に登らせてはくれない。最後の力を絞り出す思いで北岳山頂を目指す。
午後2時過ぎ、北岳(3193m)山頂に到着。ガスが濃くなり、辺りの展望はゼロだが、それでも結構人出があり、賑やかだ。3人ほどの岩登りのグループも登頂してきた。
北岳山頂 ガスの中

hiiさんも追いついてきて、記念撮影の後、早々に肩ノ小屋に向かう。私もとうに白根御池小屋はあきらめており、肩ノ小屋泊まりに落ち着いた。

【北岳肩ノ小屋】
午後3時、テント場はかなり埋まっていたが、私は昨日同様に傾斜を厭わないことにして、小屋から見て右下の区画に2人分の場所を確保した。荒い息を鎮め、しばしゆったりと過ごす。hiiさんは仮眠。私は小屋の前のテーブルで生ビールを飲み、昼間も会った若い男性3人組と話したりした。
北岳肩ノ小屋テント場

夕食はアルファ米とスキヤキ丼など。スキヤキ丼はコンビニで売っている袋詰めのおかずだが、結構うまかった。
明日の広河原からのバス時刻などについて検討。hiiさんは直ちに広河原に下山し、バスで北沢峠を経て仙流荘に向かう。私は、北岳山頂がガスで展望がなかったので、明日天気が良ければ再度登頂することも考えた。夜中過ぎ、前夜に続き流れ星を見た。

【再び北岳山頂へ】
最終日、天気は良い。私は再度山頂にトライして八本歯のコルから下山することにした。お湯で3分でできるナポリタンを食べ、午前5時過ぎ、ご来光を仰ぐ。太陽は鳳凰三山の観音岳と薬師岳の間の雲間から出た。何となく縁起が良い。
北岳肩ノ小屋からのご来光 鳳凰三山の上に

hiiさんと、広河原のバス停でまた会えるかもしれないと言いつつ別れ、5時50分、肩ノ小屋を出発。北岳山頂までは快調に歩いた。
南北に細長い北岳山頂へ

山頂は大勢の人で賑わっており、昨日と打って変わって青空の下、展望も申し分ない。塩見岳も、間ノ岳の右肩にうっすらとだが見えている。随分遠くから歩いて来たものだ。
北岳山頂手前から 間ノ岳、塩見岳まで望む

【八本歯のコルから広河原へ下山】
北岳山頂に名残惜しみつつ、6時50分、下山へ。山頂下の分岐から吊尾根を下る。急な下りだが、ハイマツの間にシナノキンバイなどの花も多い。岩場に咲く可憐な白い花と間ノ岳。
間ノ岳を望む

長い階段を下り、八本歯のコル。ここから大樺沢に下る。しばらく梯子が連続する。左手に北岳バットレスが立ちはだかり、ロッククライマーの声が響く。
北岳バットレス

狭い谷間を下り、やがて広い河原の下りになり、ザレた道を滑らないよう、落石を起こさないよう注意して歩く。雪渓が現れ、左手(左岸)の道を歩く。バットレスから沢水が流れ下ってきており、飲んでみた。重い荷で慎重に下り、多くの人に追い越され、ようやく二俣に着くと、コルからここまで、コースタイムのちょうど倍の2時間もかかっていた。
大樺沢二俣を目指す下りの道

二俣を10時に発つ。ここから下の大樺沢は、4年前に登った道であり、傾斜も緩くなってきたから、ペースを上げ、若者のグループに追い付いて行くように歩くと、コースタイムの2時間より早く広河原に着いた。
広河原

バス時刻まで50分以上あるはずだったが、タクシー乗り場で呼び止められた。ちょうど9人乗りタクシーに客が8人まで乗って待機しているところで、バス運賃と同額とのことで、私が助手席に乗り込むと、すぐ芦安温泉に向け発車した。
4日間の山行の余韻に浸るゆとりもない。hiiさんとは会えなかった。
芦安温泉の白峰会館で汗を流し、バスで甲府駅に着くと、真夏の猛暑の中だった。

【歩行時間】 [ ]内はコースタイム
1日目 鳥倉登山口→三伏峠  [2:50]  2:41

2日目 三伏峠→塩見岳    [5:00] 4:59 +塩見岳休憩 1:00
     塩見岳→熊の平    [5:00] 5:43
     計            [10:00] 11:42

3日目 熊の平→間ノ岳→北岳→肩ノ小屋 [6:20] 8:18

4日目 肩ノ小屋→北岳→広河原 [4:35] 5:55

【高低差】
1日目 鳥倉登山口1790m → 三伏峠2560m = +770m
2日目 三伏峠2560m → 塩見岳3052m → 熊の平2580m = +492m-472m
3日目 熊の平2580m → 北岳3193m → 肩ノ小屋3000m = +613m-193m
4日目 肩ノ小屋3000m → 北岳3193m → 広河原1520m = +193m-1673m