荒船山2013/04/28

[上信越] 荒船山(1422m)               →休日の山歩き top
2013年4月14日(日)

例年にない早さで桜前線が北上した4月中旬の日曜日、上信国境にある荒船山に行ってきた。荒波に浮かぶ巨大な船のような形をしていることで有名だが、その姿は、群馬県側のアプローチとなる国道254号線からも容易に見上げることができた。山頂は南北に長い台地になっており、その北端は垂直に立ちはだかる岩の絶壁になっている。船尾に当たることから艫岩(とも岩)と呼ばれるその絶壁の展望台に立つと、浅間山を正面にして、上州の山々の展望が広がる。山頂台地ののどかな笹原を歩き、最高点の経塚山(行塚山)に至る。新緑にはまだ早かったが、4月にしては気温が高く、多くの登山者で賑わっていた。

地図 荒船山

【行程】
東京5時過ぎ発⇒6時頃圏央道入間IC入る⇒7時頃上信越道下仁田IC出る⇒国道254号⇒旧道⇒内山峠駐車場7:41着

内山峠駐車場7:55→8:35大岩・修験道場跡→8:52一杯水→9:06山頂台地→9:13絶壁→9:18とも岩展望台10:44→11:15星尾・荒船不動分岐→11:23経塚山11:34→11:42黒滝山側に下るが戻る→11:49経塚山→11:55星尾・荒船不動分岐(11:15の地点)→12:05星尾峠→12:30荒船不動→12:58右折→国道→旧道→13:32内山峠駐車場

内山峠駐車場13:39発⇒荒船の湯、道の駅下仁田に立ち寄り⇒16時過ぎ下仁田IC入る⇒19時帰宅

【歩行時間】
内山峠→1:23→荒船山とも岩(休憩1:26)→0:39→経塚山(休憩等0:26)→0:41→荒船不動→1:02→内山峠 = 合計5時間37分 (歩行3時間45分、休憩等1時間52分)

(写真)国道254号から荒船山を見上げる(帰路で)
国道から荒船山を望む

【内山峠から尾根筋の登山道を歩く】
上信越道の下仁田ICを降り、下仁田町を国道254号で西に走って、道すがら荒船山の船のような姿を見て、旧道の内山峠駐車場(1080m)に着いた。7時40分で、広い駐車場はまだ余裕がある。荒船山は群馬県(下仁田町)と長野県(佐久市)の境にまたがる山で、内山峠から始まる尾根筋の登山道も、県境をたどっていく。尾根の右側の長野県側に張り出した小尾根をいくつも巻きながら、右下がりの斜面を登っていく。アップダウンを繰り返し、鞍部では左の群馬県側が切れ落ちてロープが張られている所もある。笹原と雑木に覆われた道からは展望がないが、ピークでは左前方にとも岩の絶壁が見えてきて、また左側の樹木の切れ目から浅間山が見え、右側の樹間に八ヶ岳らしい白峰が見え隠れする。やがて前方に大きな岩が立ちはだかり、修験道場の跡とのことで、門の土台石らしいものもある。大岩の右手に回り、前方に山頂台地の岩が高くそびえるのを見て進むと、道の脇の岩に水の流れがあり、昔から登山者に親しまれた一杯水という水場だ(1230m)。

【荒船山の山頂台地・とも岩】
ここから岩場の急斜面を登ると、山頂台地の一角に上がり(1330m)、笹原と落葉樹に覆われた広い平面になる。歩いてみて、ここがとも岩の絶壁の上とは分からないが、途中の左手に付いた小道に進んでみると確かに絶壁の縁だ。さらに進み、東屋風の避難小屋と、その左手に樹木が切れて広場になった場所があり、ここが荒船山艫岩展望台(1330m)だ。下仁田町が設置した標柱と、周囲360度の山を示した展望盤がある。崖の縁には手すりもなく、恐る恐る下を覗いてみると、まさしく垂直に切れ落ちた絶壁のようだ。
ここからの展望はすばらしく、まず正面に先ほどから見えている浅間山がそびえる。その手前に上州の山並みが広がり、麓には牧場の草地も見える。眼下には山あいの土地に国道がトンネルや橋を連ねてくねくねと伸びているのが一望だ。そして浅間山の右奥は草津白根山か。左側遙か遠くには北アルプスの稜線が長く続いて見えているが、ぼんやりとして確認できない。そして左右の両端がどこまで見えるか、崖の縁近くまで前進すると、左側は先ほど見えていた八ヶ岳はここからは見えず蓼科山が限度か、右側は妙義山がぎりぎり、それより左の谷急山辺りが見えるようだ。

(写真)浅間山から左側(西側)の展望。眼下に国道の橋やトンネル、そして旧道も見える。旧道が登る先に牧場があり、その上に物見山、八風山など上州の山。左奥に北アルプスがぼんやりと。中央左の崖崩れ修理地が2本見えるあたりが内山峠で、そこから左の尾根を歩いてきた。
とも岩からの展望

(写真)浅間山から右側(東側)の展望。浅間山からの稜線が鼻曲山・浅間隠山へと続き、その間の奥には草津白根山か。眼下に国道の山岳区間がくねくねと。
とも岩からの展望

(写真)とも岩からの180度の展望の両端は、
(上)左端(西側)は蓼科山まで。八ヶ岳は途中の道で樹間に見え隠れしていたが、ここからは見えない。
(下)右端(東側)は妙義山がぎりぎり(足元注意!)。その左に谷急山か、その奥にうっすらと見える榛名山か。
とも岩からの展望

登山口からここまで、3人連れ2組ほどの登山者と前後して歩くだけの静かな山道だったが、この展望台に来ると次第に行き来する登山者の数が増し、家族連れも多く、賑わいだした。私も、展望を楽しみながら昼食を摂ることにし、湯を沸かして山菜そばを作る。携帯で写真を撮り家族に送ったが、送信に時間がかかった。そうこうするうち大人数の団体も到着し、整然と記念撮影などしている。崖ぎりぎりで食事を広げている人もいるが、気を付けてね。4年前、クレヨンしんちゃんの作者が転落したのもこの辺りだろうか、賑わいの中で心中静かに故人の冥福を祈った。

【山頂台地を経て荒船山最高点・経塚山へ】
展望を満喫し、避難小屋のトイレを借りた後、とも岩展望台を後にし、船なら舳先に当たる、荒船山の最高点・経塚山に向けて台地上の平坦な道を歩く。左手に相沢・三ツ瀬への分岐を見送ると水場があり、道の右手から左手に水が流れている。その先も広い笹原が続くが、引き続きここは群馬・長野県境、したがって太平洋と日本海の水系を分かつ中央分水嶺なのだろう。道の左手・群馬側に少し入った所に柱状の石碑があり、その入口に掲げられた紙の説明によると、古代、信州諏訪神社の神と関東香取神宮・鹿島神宮の神がこの地で領地争いを起こそうとしたのを、天照大神の命で和睦させたという言い伝えにちなみ、昭和初期に地元民が石碑を建てたと書かれており、いかにも日本の両岸を分かつ背骨の地らしい。経塚山方面から戻ってくる人も多い。

(写真)山頂台地の笹原
荒船山山頂台地の笹原

右手に星尾峠・荒船不動への分岐(1350m)を見送り、最後の急登で経塚山(行塚山)(1422.5m)に到着。狭く細長い山頂で、祠と三角点があり、立木の間から八ヶ岳辺りが見えるが、多くの人が休憩するには不向きだ。なお、第33回国民体育大会(1978年長野国体)の炬火を採火した地の記念碑もある(ここの地形は県境の尾根から山頂が群馬県側にはみ出しているようにも思えるが、山頂まで長野県境の線を引いているのか)。

【荒船不動を経て周回する】
経塚山からの下山は、来た道を戻るのが普通だが、荒船不動を経て周回するのも悪くないと考え、完全に周回するために、山頂には何も案内標識がないが、地図を頼りに、経塚山の反対側(黒滝山の方向)に下り、巻き道を通って星尾峠に至ることを試みた。しかし山頂から下ると道が不明瞭になり、分岐を見落とす懸念があったので、山頂に引き返し、来た道を星尾峠分岐まで戻った。分岐の先で長い階段を下り、黒滝山への分岐、そして星尾峠(1260m)に至る。星尾峠で県境尾根と別れ、長野県佐久市に向けての下りになる。右手から流れてくる小さな沢をいくつも渡り、左下がりの斜面を下っていく。こちら側から登ってくる何人かの人とすれ違い、また幼子連れの家族を追い越した。登山口の案内地図の所で沢を渡り、荒船不動の清楚なたたずまいを抜けると舗装された車道になり、登山者用の駐車場もある。あとは内山峠まで約1時間の車道歩きになる。

【車道を歩き内山峠に戻る】
この川沿いの道から左側に、荒船山からの県境尾根の延長方面にある兜岩山がそびえて見える。館ヶ沢集落を通り抜け、そのまま進むと国道の内山大橋の下をくぐってしまうので、その手前で右折し、川を渡って国道まで登り、国道を少し歩いて内山トンネルの手前で旧道に入り、登ってトンネル上部の内山峠に戻ることになる。最高点の経塚山(1422m)から出発点の内山峠(1080m)までは約340mの高低差だが、この周回コースでは、荒船不動(1040m)で既に出発点より下がっており、さらに内山大橋手前の最低点(900m)から内山峠まで約180mも登り返すのが、水平距離もさることながら、ちょっと難点だ。
国道辺りまで来たとき、途中で追い越した家族連れのうちの男性が追いついてきて、車で家族を迎えに行くと言って走っていった。内山峠への登り道を歩いているとこの男性が車で下りてきた。いざというとき頼りになるお父さん、頑張って。
内山峠の駐車場に戻ると、道路上にはみ出して停めた車も多く、一時は混雑したようだが、駐車場の中は既に車が発ってかなり空いていた。

(写真)旧道から荒船山を望む。右のアップダウンの尾根を経て左のとも岩に達した。
旧道から荒船山を望む

帰路では、国道脇に設けられた駐車スペースから改めてとも岩を見上げた。とも岩の絶壁の地形がどのようにしてできたか不思議だが、ここの解説によると、750万年前の火山活動で溶岩が流れ、広い範囲に厚い安山岩の層ができたが、その後の浸食で削られ狭くなり、今のとも岩の崖が残っているのだ、とのこと。だとすれば、山を形作る自然の力のうち、隆起や堆積とともに浸食の作用も大変大きいと思う。また、山は動かざる如しだが、地質学的時間で見ると大きく動いていることになる。荒船の湯に立ち寄り汗を流して帰った。

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