武尊山 Hotakayama2011/11/08

[北関東] 武尊山(2158m)  2011年10月29日(土)       → 休日の山歩き top

10月最後の週末、上州武尊山に出かけることにした。武尊山(ホタカヤマ)は、谷川連峰とは利根川を挟んで対峙し、尾瀬や日光の山域からも独立した、単独の山だが、山体が大きく、各方向から登山路がある。いずれもアプローチには車利用で、駐車場のある登山口がざっと9つあるだろうか。その中で、南側の川場谷野営場から前武尊を経て武尊山(沖武尊)に往復するコースを選んだ。

川場剣ヶ峰の岩場から武尊山(沖武尊)への稜線を望む。右から家ノ串、中ノ岳、沖武尊
川場剣ヶ峰の岩場から稜線を望む。左から沖武尊、中ノ岳、家ノ串

川場谷野営場から天狗尾根に上がる
土曜日早朝、天気は良い。関越道沼田インターを出て川場村への県道を快走し、未舗装ながら良く管理された道に入り、午前6時半に目的地の川場谷(カワバダニ)野営場に着いた。避難小屋があり、広い駐車場に私の車が5台目だ。トイレは使用不可になっている。武尊山を目指して川場谷の左岸の道を歩き始める。

谷筋まで日は差してこないが、左手の尾根は朝日を浴びて明るくなっている。これは川場尾根で、旭小屋から発ち、不動岳を経て武尊山を目指すものだ。武尊山の数ある登山路の中で、旭小屋からのコースは古くから修験者によって登られたものだとのこと。そして谷筋の道は、その不動岳へと向かう分岐にさしかかり、私の前を歩いていた男女2人組がそちらに向かったようだ。今回は、厳しい鎖場があるという不動岳のコースを遠慮し、右手の尾根に向かう急登の道を選んだ。
やがて登山口から約1時間が経つ頃、天狗尾根に上がった。針葉樹と広葉樹が混じり、落ち葉が厚く積もる平坦な尾根道になった。樹間から左右の展望を楽しんだのも束の間、すぐに尾根筋の急登になる。やがて右手からオグナほたかスキー場からの道が合流し、女性が1人登ってきた。リフト降り場を見てなおも急登する。
オグナほたかスキー場

前武尊から稜線の縦走路へ
笹原が広がり樹木もまばらになる頃、前武尊(マエホタカ)(2039m)のピークに着いた。笹や木立に囲まれた場所に日本武尊(ヤマトタケルノミコト)像が屋根を架けられて陣取っており、また不動岳から鎖場を経て来た道がここで合流する。タケル像は神話時代の人物というよりは坊さんのような雰囲気で、目を細め手をかざして前方を望んでいる。ここからは木立の間に南から南東の方向に展望があり、赤城山と皇海山、さらに富士山が見える。パンを食べながら小休止し、後着した男女各1人に先行してもらった。
前武尊

前武尊から北側の縦走路に向かうと、すぐに木立を抜け前方に川場剣ヶ峰がそびえる。山頂の水平な直線部に木がなく地肌がむき出しの台形状で、崩壊のため今は登れないようだ。剣ヶ峰の右側の巻き道は、急斜面の笹を刈り払った道だが、笹の太い茎を倒した上を歩き、滑り易い。
川場剣ヶ峰

川場剣ヶ峰の岩場を試みる
剣ヶ峰を巻くと岩峰群の鞍部に着き、後方は鎖のある道を虎ロープで通行止めにしてあるが、前方には岩場を直登する道と左に巻く道の両方がある。地図にも「ピーク越しのルートは危険、初心は巻き道を」とか書いてあるので、物好きにも直登してみた。垂直に近い短い鎖を登ると岩のてっぺんに祠も鎮座し、家ノ串、中ノ岳、沖武尊の3つのピークの展望が開けた。

その先の狭い岩場は、3点確保ほどではないが2足歩行ではちょっと怖い。しかしすぐに、下りられない岩があったので、すごすごと鞍部まで戻り、左の巻き道を通った。

縦走路から川場剣ヶ峰を振り返ると、先程は地肌がむき出た台形だったものが、こちらからは木が生えた黒い三角形に見える。よく見ると山頂から右下へと岩峰が3段になっており、その2段目と3段目の鞍部で巻き道が右から左へと移り、3段目の岩に直登コースがあるのだ。

この先で、持参の登山地図がなくなっていることに気付いた。リュックサック(デイパック)の両脇の網ポケットに、ペットボトルと、ビニールカバーに入れた地図を差して歩いていたのだが、地図がどこかで落ちたらしい。コースが明瞭なので、とりあえず地図がなくても支障はなかった。

稜線の縦走路を経て武尊山(沖武尊)へ
家ノ串山(2103m)は高低差が緩く、ピークを踏む。左右の展望が開け気持ちの良い縦走路を楽しむ。右後方の皇海山は、2年前に苦戦した山だが、今日は穏やかにサツマイモを半分に切ったような形でたたずんでいる。前方に中ノ岳、その左に目的地の沖武尊があり、さらに左に下る稜線上の突起は剣ヶ峰山だろうか、左裾には建物が見える(川場スキー場のリフト降り場か)。
沖武尊から先に伸びる稜線上の剣ヶ峰山(左)

一方、中ノ岳の右側の稜線上には、武尊牧場からのコースだろうか、岩の迫り出しの上に気持ちよさそうな広場があり、さっきから団体が休んでいる。
中ノ岳の前で右からの道を合わせ、左へ沖武尊への最後の区間に入る。水場があり、細い水の流れがある。中ノ岳の左側をトラバースし、窪地の間の三ツ池を通る。3つ目の池は水面に青い空を映して綺麗だった。
前方にもう一つのタケル像が見えたので、山頂かと思ったが、山頂より少し手前だ。こちらのタケル像は厳しい目つきで下界を睨んでいるようだ。

武尊山(沖武尊)山頂
山頂手前の合流を経て、武尊山(沖武尊)(2158m)山頂に着いた。11時20分、川場谷の登山口から4時間半だ。さして広くない山頂には既に20人位の人が憩っている。多くの登山口からのコースが最終的に3方向に集約され山頂に至るのだ。混み合う中で座る場所を確保した。やがて武尊牧場のコースからの賑やかな団体が到着し、山頂は座る場所がない混雑になった。団体は茨城県の複数の高校の山岳部員と引率の教員のようで、学校ごとにお揃いの服装をして、楽しそうだ。
武尊山山頂の賑わい

山頂広場には看板の形をした山頂標識、方位展望盤、御嶽山大神の石碑、三角点などがある。山頂からはまさに360度の展望が開け、快晴の青空に山々が望める。山頂広場が下り気味になる南側は、左手に今たどってきた前武尊からの稜線が伸び、川場剣ヶ峰と家ノ串が似たような角張った台形状をしており、前武尊は剣ヶ峰の後ろで見えない。家ノ串の奧に皇海山が見える。
沖武尊から前武尊への稜線を望む

南側の右手には剣ヶ峰山を擁する稜線が伸びる。この左右の稜線の間に沼田の市街地や赤城山、富士山を望む。

一方、山頂標識(看板)のある北側には、緑と土色の至仏山が指呼の間にそびえ、その右に従える燧ヶ岳との間が尾瀬ヶ原だろう。
沖武尊から尾瀬方面を望む

山頂の西側は、這い松の間に武尊神社・裏見ノ滝などからの登山道が切られ、その奧に谷川連峰と、特徴のある苗場山が見える。谷川岳と一ノ倉岳の間は日陰になって黒い壁のように見える。
沖武尊から谷川岳方面を望む

山頂で展望を楽しみ、弁当を食べ、1時間余り過ごし、高校の団体も分散して下山し静けさを取り戻した頃、12時半に下山にかかる。

稜線の縦走路を下山
秋の日は短く、下山時には薄暗くなることも覚悟しなければならないが、朝の道の往復だから安心感があった。家ノ串を過ぎ、川場剣ヶ峰の岩峰に来た。登りで通れなかった岩場だが、赤ペンキで明瞭に直登と右の巻き道の両方向の矢印が書かれている。どっちを歩こうか悩んだが、再びの物好き精神と、地図が落ちているかもしれないという理由で、直登の道を選んだ。短い鎖の後、鉄の梯子があり、程なく登りで通れなかった地点に来た。やはりこちら側からも、身長の倍ほどだがどうにも登れない岩で、しかも右側が切れ落ちている。思案していると、消えかかった赤ペンキが左横の巻き道を指示しているのに気付き、這い松の間を難なく通過し、登りで引き返した地点に出た。登りではこの巻き道は岩から右下に下りるようになっており、気付かなかったのだ。後は小さな祠を過ぎ、無事鞍部に達した。この区間の通過は巻き道で5分、直登で10分というところだ。地図は見つからなかった。滑り易い笹の巻き道を通過し、前武尊に達した。

前武尊からの下山路
前武尊のタケル像の下で休んだ後、川場谷駐車場までは男性2人組と前後して歩いた。この2人は登りでは不動岳を通ったとのことだ。急降下の続く道を速いテンポで歩き、谷沿いの緩い道では、葉を落とした林の中で所々残る紅葉・黄葉を楽しみ、午後3時45分、まだ十分明るいうちに登山口の駐車場に戻った。先の2人組の車と私の車が去った後、駐車場にはなお4台ほどが残った。持参したアナログ高度計も、ほぼ期待どおりの高度を示した。

今回は、全体的に歩き易く稜線上からの展望の良いコースで、最高の天気に恵まれ、山頂からの展望も申し分なく、満足の山歩きだった。
帰路では、県道脇に旭小屋の表示がある所で車を停め、下方の川の対岸に木立に囲まれた小屋の建物があるのを確認した。小住(コジュウ)温泉に立ち寄り、綺麗な施設で汗を流し(入浴料600円)、沼田インターから関越道に入り、2つのサービスエリアで眠気を覚ましながら帰った。

武尊山

行程
自宅3時過ぎ発⇒関越道沼田IC6:08出る⇒川場谷野営場駐車場6:35着

川場谷野営場6:48→7:17不動岳分岐→7:55天狗尾根取付き8:05→8:20オグナほたかスキー場合流→9:00前武尊9:25→川場剣ヶ峰の右を巻く→9:42剣ヶ峰岩峰群の鞍部(岩峰直登を試みるも戻る)9:52→左を巻き5分で通過→10:23家ノ串山→10:48中ノ岳の分岐→11:20武尊山山頂(沖武尊)12:32→12:58中ノ岳の分岐→13:18家ノ串山→13:38岩峰直登→13:49鞍部→14:08前武尊14:15頃→14:43オグナほたかスキー場分岐→14:56頃天狗尾根下降点→15:22不動岳分岐→15:45川場谷野営場

川場谷野営場駐車場15:57発⇒小住温泉1時間⇒関越道沼田IC17:40頃入る⇒自宅21時過ぎ着

高低差
川場谷野営場1220m←→武尊山2158m=±938m

歩行時間 [ ]はコースタイム
川場谷野営場→沖武尊 [5:05] 4:32 +山頂休憩1:12
沖武尊→川場谷野営場 [4:05] 3:13
計             [9:10] 8:57

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